京都大学複合原子力科学研究所の中村秀仁助教らのグループは、科学に理解ある社会の実現のため、最先端の研究開発に加え、一般社会の科学的リテラシー涵養という両輪を回そうとしています(通称、Nプロジェクト)。今度の舞台は、一般の高校(大阪高等学校)です。対象は全生徒2116名、教員150名、文系理系を問いません。本展示には、科学を縁遠く感じている若者の心に如何に科学への関心の火を灯すのか、という解があります。令和6年5月9日劇場公開当日、観客数500名を突破したNプロジェクトプレゼンツ科学映像「わたしたちには文系理系関係ない」をご覧になって頂くことができます。
遥か遠い世界にいると思われがちだった科学者が、中等教育現場に直接入り、高校教員と協力しながら先端科学に触れる機会を生徒並びに保護者に対して継続的に設けたことで、科学に対する学びのエントランスを開き、誰もが生まれ持つ自主性を開花させやすい環境を整えてきました。同時に、インプットした学びを自身が咀嚼した上で一般市民に対して説明する、というアウトプットの選択肢も提示してきました。その選択が、自らの責任感を呼び起こし、科学的リテラシー涵養への自主性を主体性に切り替えます。この学びのインプットとアウトプットの反復が、生徒一人ひとりを主役にしていきます。Nプロジェクトを通じて、講義を聞くだけの受動的学習から、自ら調べ、考え、他者に説明するまでに成長した多くの生徒の姿がありました。主体的に活動するまでの変化をプロジェクト立ち上げから1本のフィルムに収めました。
2050年のカーボンニュートラルの実現には、CO2国内総排出量の約25%を占める鉄鋼や化学を含む産業部門からの削減が必須であり、そのためには大規模かつ安定で安価な水素供給が必要です。
高温ガス炉は、被覆燃料粒子、黒鉛構造材、ヘリウムガス冷却材を用いることで物理的特性による炉心溶融を起こさない設計が成立するなど優れた固有の安全性を有する次世代原子炉であり、従来の軽水炉よりも高温度帯となる800℃以上の高温熱の活用や水素製造等の産業利用が期待されます。
原子力機構は、高温ガス炉の実用化に向け、高温ガス炉の試験研究炉「HTTR」を建設以降、基盤技術を開発・確証するとともに、様々な異常状態を模擬した試験を通して安全性の確証を進めてきました。2011年から長期間運転停止していましたが、HTTRの優れた安全性が原子力規制委員会に認められ2020年6月に原子炉設置変更許可を取得、2021年に運転を再開、2024年3月には出力100%からの炉心流量喪失試験を行い、成功裏に終了しました。
原子力機構は、来たるべき水素社会を見据えた経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「超高温を利用した水素大量製造技術実証事業」を受託し、HTTRを用いた水素製造事業を開始しました。本事業では、高温ガス炉と水素製造施設の高い安全性を実現する接続技術を確立し、2030年までに水素製造を実証する計画です。
本企画展示では、水素社会と高温ガス炉の必要性、カーボンニュートラルに向けた原子力機構の取り組みを紹介します。
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